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社内勉強会が続かない「効果を感じられない」と言われる理由:続く勉強会・読書会は何が違うか

2026 10/27
チームとリーダーシップ
2026年10月27日
勉強会・読書会が続くグループ、消えるグループ:社会的手抜きと「当たり前」
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第1回は12人、第2回は9人、第3回は7人、第4回は4人。第5回の案内は、誰も出さないまま年度が変わった。

社内で勉強会や読書会を始めたことのある人なら、こうした参加者数の推移に覚えがあるかもしれません。一方で、同じ会社の中に、細々とでも何年も続いている集まりがあったりもします。

続くグループと消えるグループの差は、参加者の熱意の差だけでは説明しきれません。手がかりにするのは、集団の心理学で知られる2つの現象です。この記事で答える問いは、次の3つです。

  • 熱意のある人が集まったはずの勉強会が、なぜ回を重ねるごとに痩せていくのか
  • 何年も続く集まりは、消えていく集まりとどこが違うのか
  • 参加者が減り始めたとき、次の回から何を変えればよいか

結論:勉強会や読書会が消えていく背景には、人数が増えると一人ひとりが力を抜きやすくなる「社会的手抜き」と、最初の数回で「準備しなくても大丈夫」といった集まりの当たり前(規範)が決まってしまうことがあります。続くグループでは、一人ひとりに小さな出番があり、仲間も準備してくると思え、学ぶ中身が自分の仕事につながっています。読書会なら、進め方の型を選ぶことで、こうした条件を整えられます。

目次

理由1:人数が増えると、一人ひとりは力を抜く

集団で作業をすると、一人あたりの頑張りは小さくなりがちです。古くは20世紀の初めに、フランスの農業技術者マクシミリアン・リンゲルマン氏が、綱引きのように人数を増やして綱を引く実験で、一人あたりの力が人数とともに下がることを報告しました。

この現象に「社会的手抜き(social loafing)」という名前を与えたのは、傍観者効果の研究でも知られるアメリカの社会心理学者ビブ・ラタネ氏が、キプリング・ウィリアムズ氏、スティーブン・ハーキンス氏と行った1979年の研究です。参加者に、一人で、または何人かで一緒に、できるだけ大きな声を出したり手をたたいたりしてもらうと、人数が増えるほど一人あたりの音は小さくなりました。さらに、実際には一人なのに「みんなと一緒に声を出している」と思わせた条件でも音は小さくなり、息が合わないことだけでなく、やる気が下がることも原因だと示されました。

では、どんなときに手抜きは小さくなるのか。スティーブン・カラウ氏と、仲間外れの研究でも知られることになるウィリアムズ氏は、1993年に78の研究をまとめて分析しました。手抜きの大きさを左右する条件として、一人ひとりの働きが評価され得るか、ほかのメンバーがどのくらい頑張ると予想するか、課題にどれだけ意味を感じられるか、などを挙げています。

社会的手抜きが小さくなる条件。一人ひとりの働きが評価され得ること、ほかのメンバーの働きをどう予想するか、課題に意味を感じられること。勉強会では、自分の出番が見える、仲間も準備してくると思える、学ぶ中身が自分の仕事につながる、にあたる

この3つの条件を勉強会に置き換えると、次のようになります。

手抜きを小さくする条件勉強会でいえば欠けているときの様子(例)
一人ひとりの働きが評価され得る自分の出番が見える「聞いているだけでいい」会になり、来ても来なくても同じに感じる
ほかのメンバーの働きへの予想仲間も準備してくると思える「どうせ誰も読んでこない」と思い、自分も読まなくなる
課題に意味を感じられる学ぶ中身が自分の仕事につながるテーマが遠く、忙しい月には真っ先に後回しになる

冒頭の勉強会で人数が減っていったのは、参加者がなまけ者だったからではありません。こうした条件が、回を重ねるごとに少しずつ欠けていったからです。

理由2:最初の数回で「当たり前」が決まる

集まりの「当たり前」は、最初の数回の様子で決まり、一度できると変えにくくなります。集団には、口に出さなくてもメンバーが従う「当たり前」があります。心理学では、これを集団規範と呼びます。

集団が育っていく道すじとしてよく知られているのが、アメリカの教育心理学者ブルース・タックマン氏が1965年に示した段階のモデルです。同氏は、小集団が形成期(forming)、混乱期(storming)、統一期(norming)、機能期(performing)の順に進むと整理しました。1977年には、メアリー・アン・ジェンセン氏とともに、集団が役目を終える散会期(adjourning)を加えています。

タックマンの集団の発達段階。形成期、混乱期、統一期、機能期、散会期の順に進む

社内の勉強会は、この混乱期を通らないまま進みがちです。進め方への不満や「正直、準備がきつい」という本音は、職場の関係があるぶん口に出しにくいからです。話し合わないまま、最初の数回の様子が、そのまま集まりの当たり前になります。

  • 第1回で、資料を読んでこなかった人が何も言われなかった → 「読んでこなくても大丈夫」が当たり前になる
  • 第2回で、主催者が一人で話し続けた → 「主催者の話を聞く会」が当たり前になる
  • 第3回で、欠席の連絡がなくても何も起きなかった → 「来なくても誰も困らない」が当たり前になる

当たり前は、一度できると変えにくくなります。だからこそ、最初の数回で、どんな当たり前をつくるかを意識しておく価値があります。

続くグループ、消えるグループの違い

続くグループには、毎回全員に小さな出番があり、準備の量が忙しい月でもこなせる量に決めてあり、学んだことを自分の仕事に当てはめて話す時間があります。2つの理由を下敷きに、続くグループと消えるグループの違いを書き分けると、次のようになります。

続くグループ消えるグループ
一人の出番毎回、全員に小さな出番がある(一言の感想、問いを一つ持ってくる)話すのは主催者と一部の人だけ
準備の量忙しい月でもこなせる量に決めてある最初の熱意に合わせた量のまま
最初の数回で決まったこと「読めなかった人も来てよい。読めなかった理由を一言話す」「読んでこなくても、何も言われない」
テーマと仕事の距離学んだことを、自分の仕事に当てはめて話す時間がある本の内容の確認で終わる
終わり方区切り(1冊読み終えたら一度振り返る)がある終わりを決めず、自然消滅する

読書会は、進め方の型で続きやすさが変わる

読書会は、型の優劣ではなく、グループの忙しさと人数に合う進め方の型を選ぶと続きます。読書会には、いくつかの進め方の型があります。下の表では、代表的な3つの型を、準備の負担と出番の見えやすさで比べています。

型進め方準備の負担出番の見えやすさ向いているグループ
担当発表型章ごとに担当を決め、担当者がまとめを発表する担当の回だけ大きい担当者以外は見えにくい人数が少なく、担当が早く回ってくる
事前に読んで対話する型全員が同じ範囲を読んできて、感想や問いを話し合う毎回、中くらい全員に出番があるが、読んでこない人が出やすい準備の時間を取れる人が多い
当日に読む型その場で範囲を分けて読み、要約を伝え合ってから対話するなし全員に出番がある忙しい人が多い、初めての人が来やすくしたい

担当発表型は、担当でない回に「聞いているだけでよい」状態になりやすい型です。人数が増えてきたら、担当者の発表のあとに、全員が一言ずつ話す時間をつくるなどの工夫が要ります。当日に読む型は準備が要らないぶん、続けやすい一方で、深く読み込むには時間が足りないこともあります。

例:ある読書会の3人の心の声

参加者が減った読書会は、準備をなくし、全員の出番と仕事の話をする時間をつくると、空気が変わり始めます。月1回、担当発表型で続けてきた読書会が、第4回で参加者4人まで減ったことがありました。主催者は第5回から当日に読む型に切り替え、終わりの10分で「自分の仕事なら、どう使うか」を一人ずつ話す時間を加えました。切り替える前とあとで、3人はこんなことを感じていました。

第4回までに思っていたこと進め方を変えたあと
Nさん(2回目の参加)担当の人の発表を聞くだけ。自分がいてもいなくても同じかな自分が読んだ範囲を、自分の言葉で説明しないといけない。慣れないけれど、少しおもしろくなってきた
Oさん(初回からの常連)今月も読めていない。読めていないのに行くのは気まずい読んでこなくていいなら、忙しい月でも顔を出せそう
Pさん(主催者)毎回、自分がいちばん話している。これは誰のための会なんだろう最後の10分で、ぽつぽつと仕事の話が出始めた。次の本の相談も、少しはできるかもしれない

続かない兆しと、次の回からできる手直し

集まりが消えていくときにはたいてい兆しがあり、気づいた兆しに合わせて、次の回から一つずつ手を入れていけば十分です。よくある兆しと、それに合わせた手直しを並べます。

兆し考えられること次の回からできる手直し
発言が主催者と一部の人に偏る出番が見えない終わりに全員が一言ずつ話す時間をつくる
準備してこない人が増える準備の量が多い、または「読んでこなくても大丈夫」が当たり前になった範囲を半分にする。読めなかった人も、読めなかった理由を一言話してよいことにする
欠席の連絡がなくなる来なくても誰も困らないと感じている次回、誰がどの範囲を読むかを、その場で決めて終わる
毎回、本の内容の確認で終わる学ぶ中身が仕事とつながっていない「自分の仕事なら、どう使うか」を話す時間を加える
終わりが見えないいつまで続くのか分からず、抜けにくい1冊、または3回を区切りにして、一度振り返る

区切りを決めるのは、やめるためではありません。振り返りの場があると、進め方への本音を話す機会、つまり話し合わずに過ぎてしまった混乱期を、あとから取り戻す機会にもなります。

AI活用のポイント:読書会の「問い」を用意する

全員に出番をつくるいちばん簡単な方法は、話し合う問いを用意しておくことです。生成AIに、読む範囲の要点と自分のメモを渡して、問いの候補を出してもらうと、準備の負担を軽くできます。本の文章を長く貼り付けるのは避け、目次や自分のメモを渡すのが安全です。

社内の読書会で、次の範囲を読みます。参加者は6人ほどで、職種はばらばらです。
読む範囲:[例 第3章「チームの学習」]
この章の要点(自分のメモ):
[例
・チームで話し合うと、個人で考えるより視野が広がることがある
・ただし、本音が出ない場では形だけの話し合いになる]
次の条件で、話し合いの問いを5つ出してください。
1. 本を読めていない人でも、自分の経験から答えられる問いを2つ入れる
2. 自分の仕事にどう当てはめるかを考える問いを2つ入れる
3. 正解のある問い(内容の確認)は1つまで
4. 1つの問いは、1文で短く

AIが出した問いは、そのまま使わず、グループの様子に合わせて言葉を直してから出します。誰が答えにくそうかを思い浮かべながら選ぶのが、主催者の仕事です。

まとめ

  • 勉強会が消えていくのは、熱意が足りないからとは限りません。人数が増えると力を抜きやすくなる「社会的手抜き」と、最初の数回で決まる「当たり前」が関わっています
  • 手抜きは、出番が見え、仲間も準備してくると思え、学ぶ中身に意味を感じられるときに小さくなります
  • 読書会は、担当発表型、事前に読んで対話する型、当日に読む型など、進め方の型で続きやすさが変わります
  • 兆しに気づいたら、次の回から一つずつ手直しをします

次の回の終わりに、全員に「次回、自分が持ってくる問いを一つ」決めてもらってください。それだけで、次の回に一人ひとりの出番が生まれます。

12人、9人、7人、4人。冒頭の数字は、誰かの熱意が冷めた記録ではなく、出番と当たり前が少しずつ欠けていった記録です。4人になった回は、終わりの合図ではなく、全員に出番が回る人数になった回でもあります。

連載:越境学習とコミュニティ

職場の外で学び、つながりを組織の力にするまでを、12本で順にたどる連載です。

  1. 越境学習とは?社外に出ると学びが深まる理由
  2. 越境学習の始め方
  3. 越境学習から戻ったあとが本番
  4. 正統的周辺参加とは?
  5. 実践共同体(CoP)とは?
  6. ソーシャル・キャピタルとは?
  7. 弱い紐帯の強さとは?
  8. 生成AIの社内コミュニティの作り方
  9. コミュニティマネジメントの基本
  10. 社内勉強会が続かない理由
  11. 弱さを見せあえる組織とは
  12. 部署や職種を越えて協働する

関連記事

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  • 実践共同体(CoP)とは?学び合う集団の3つの要素
  • 生成AIの社内コミュニティの作り方:実践コミュニティで活用を広げ、育てる

参照情報

  • Bibb Latané, Kipling Williams and Stephen Harkins, “Many Hands Make Light the Work: The Causes and Consequences of Social Loafing,” Journal of Personality and Social Psychology, 37(6), 1979, pp. 822-832
  • Steven J. Karau and Kipling D. Williams, “Social Loafing: A Meta-Analytic Review and Theoretical Integration,” Journal of Personality and Social Psychology, 65(4), 1993, pp. 681-706
  • Bruce W. Tuckman, “Developmental Sequence in Small Groups,” Psychological Bulletin, 63(6), 1965, pp. 384-399
  • Bruce W. Tuckman and Mary Ann C. Jensen, “Stages of Small-Group Development Revisited,” Group & Organization Studies, 2(4), 1977, pp. 419-427

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この記事を書いた人

多一

IT業界で10年以上、国内外のIT企業でエンジニアとITサービスの導入後の定着支援に携わる。現在は生成AIを組織に取り入れ、業務改善につなげる支援をしている。変革管理・組織学習に特に関心があり、組織変革とAI活用を現場で使える形で発信中。

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