第1回は12人、第2回は9人、第3回は7人、第4回は4人。第5回の案内は、誰も出さないまま年度が変わった。
社内で勉強会や読書会を始めたことのある人なら、こうした参加者数の推移に覚えがあるかもしれません。一方で、同じ会社の中に、細々とでも何年も続いている集まりがあったりもします。
続くグループと消えるグループの差は、参加者の熱意の差だけでは説明しきれません。手がかりにするのは、集団の心理学で知られる2つの現象です。この記事で答える問いは、次の3つです。
- 熱意のある人が集まったはずの勉強会が、なぜ回を重ねるごとに痩せていくのか
- 何年も続く集まりは、消えていく集まりとどこが違うのか
- 参加者が減り始めたとき、次の回から何を変えればよいか
結論:勉強会や読書会が消えていく背景には、人数が増えると一人ひとりが力を抜きやすくなる「社会的手抜き」と、最初の数回で「準備しなくても大丈夫」といった集まりの当たり前(規範)が決まってしまうことがあります。続くグループでは、一人ひとりに小さな出番があり、仲間も準備してくると思え、学ぶ中身が自分の仕事につながっています。読書会なら、進め方の型を選ぶことで、こうした条件を整えられます。
理由1:人数が増えると、一人ひとりは力を抜く
集団で作業をすると、一人あたりの頑張りは小さくなりがちです。古くは20世紀の初めに、フランスの農業技術者マクシミリアン・リンゲルマン氏が、綱引きのように人数を増やして綱を引く実験で、一人あたりの力が人数とともに下がることを報告しました。
この現象に「社会的手抜き(social loafing)」という名前を与えたのは、傍観者効果の研究でも知られるアメリカの社会心理学者ビブ・ラタネ氏が、キプリング・ウィリアムズ氏、スティーブン・ハーキンス氏と行った1979年の研究です。参加者に、一人で、または何人かで一緒に、できるだけ大きな声を出したり手をたたいたりしてもらうと、人数が増えるほど一人あたりの音は小さくなりました。さらに、実際には一人なのに「みんなと一緒に声を出している」と思わせた条件でも音は小さくなり、息が合わないことだけでなく、やる気が下がることも原因だと示されました。
では、どんなときに手抜きは小さくなるのか。スティーブン・カラウ氏と、仲間外れの研究でも知られることになるウィリアムズ氏は、1993年に78の研究をまとめて分析しました。手抜きの大きさを左右する条件として、一人ひとりの働きが評価され得るか、ほかのメンバーがどのくらい頑張ると予想するか、課題にどれだけ意味を感じられるか、などを挙げています。

この3つの条件を勉強会に置き換えると、次のようになります。
| 手抜きを小さくする条件 | 勉強会でいえば | 欠けているときの様子(例) |
|---|---|---|
| 一人ひとりの働きが評価され得る | 自分の出番が見える | 「聞いているだけでいい」会になり、来ても来なくても同じに感じる |
| ほかのメンバーの働きへの予想 | 仲間も準備してくると思える | 「どうせ誰も読んでこない」と思い、自分も読まなくなる |
| 課題に意味を感じられる | 学ぶ中身が自分の仕事につながる | テーマが遠く、忙しい月には真っ先に後回しになる |
冒頭の勉強会で人数が減っていったのは、参加者がなまけ者だったからではありません。こうした条件が、回を重ねるごとに少しずつ欠けていったからです。
理由2:最初の数回で「当たり前」が決まる
集まりの「当たり前」は、最初の数回の様子で決まり、一度できると変えにくくなります。集団には、口に出さなくてもメンバーが従う「当たり前」があります。心理学では、これを集団規範と呼びます。
集団が育っていく道すじとしてよく知られているのが、アメリカの教育心理学者ブルース・タックマン氏が1965年に示した段階のモデルです。同氏は、小集団が形成期(forming)、混乱期(storming)、統一期(norming)、機能期(performing)の順に進むと整理しました。1977年には、メアリー・アン・ジェンセン氏とともに、集団が役目を終える散会期(adjourning)を加えています。

社内の勉強会は、この混乱期を通らないまま進みがちです。進め方への不満や「正直、準備がきつい」という本音は、職場の関係があるぶん口に出しにくいからです。話し合わないまま、最初の数回の様子が、そのまま集まりの当たり前になります。
- 第1回で、資料を読んでこなかった人が何も言われなかった → 「読んでこなくても大丈夫」が当たり前になる
- 第2回で、主催者が一人で話し続けた → 「主催者の話を聞く会」が当たり前になる
- 第3回で、欠席の連絡がなくても何も起きなかった → 「来なくても誰も困らない」が当たり前になる
当たり前は、一度できると変えにくくなります。だからこそ、最初の数回で、どんな当たり前をつくるかを意識しておく価値があります。
続くグループ、消えるグループの違い
続くグループには、毎回全員に小さな出番があり、準備の量が忙しい月でもこなせる量に決めてあり、学んだことを自分の仕事に当てはめて話す時間があります。2つの理由を下敷きに、続くグループと消えるグループの違いを書き分けると、次のようになります。
| 続くグループ | 消えるグループ | |
|---|---|---|
| 一人の出番 | 毎回、全員に小さな出番がある(一言の感想、問いを一つ持ってくる) | 話すのは主催者と一部の人だけ |
| 準備の量 | 忙しい月でもこなせる量に決めてある | 最初の熱意に合わせた量のまま |
| 最初の数回で決まったこと | 「読めなかった人も来てよい。読めなかった理由を一言話す」 | 「読んでこなくても、何も言われない」 |
| テーマと仕事の距離 | 学んだことを、自分の仕事に当てはめて話す時間がある | 本の内容の確認で終わる |
| 終わり方 | 区切り(1冊読み終えたら一度振り返る)がある | 終わりを決めず、自然消滅する |
読書会は、進め方の型で続きやすさが変わる
読書会は、型の優劣ではなく、グループの忙しさと人数に合う進め方の型を選ぶと続きます。読書会には、いくつかの進め方の型があります。下の表では、代表的な3つの型を、準備の負担と出番の見えやすさで比べています。
| 型 | 進め方 | 準備の負担 | 出番の見えやすさ | 向いているグループ |
|---|---|---|---|---|
| 担当発表型 | 章ごとに担当を決め、担当者がまとめを発表する | 担当の回だけ大きい | 担当者以外は見えにくい | 人数が少なく、担当が早く回ってくる |
| 事前に読んで対話する型 | 全員が同じ範囲を読んできて、感想や問いを話し合う | 毎回、中くらい | 全員に出番があるが、読んでこない人が出やすい | 準備の時間を取れる人が多い |
| 当日に読む型 | その場で範囲を分けて読み、要約を伝え合ってから対話する | なし | 全員に出番がある | 忙しい人が多い、初めての人が来やすくしたい |
担当発表型は、担当でない回に「聞いているだけでよい」状態になりやすい型です。人数が増えてきたら、担当者の発表のあとに、全員が一言ずつ話す時間をつくるなどの工夫が要ります。当日に読む型は準備が要らないぶん、続けやすい一方で、深く読み込むには時間が足りないこともあります。
例:ある読書会の3人の心の声
参加者が減った読書会は、準備をなくし、全員の出番と仕事の話をする時間をつくると、空気が変わり始めます。月1回、担当発表型で続けてきた読書会が、第4回で参加者4人まで減ったことがありました。主催者は第5回から当日に読む型に切り替え、終わりの10分で「自分の仕事なら、どう使うか」を一人ずつ話す時間を加えました。切り替える前とあとで、3人はこんなことを感じていました。
| 第4回までに思っていたこと | 進め方を変えたあと | |
|---|---|---|
| Nさん(2回目の参加) | 担当の人の発表を聞くだけ。自分がいてもいなくても同じかな | 自分が読んだ範囲を、自分の言葉で説明しないといけない。慣れないけれど、少しおもしろくなってきた |
| Oさん(初回からの常連) | 今月も読めていない。読めていないのに行くのは気まずい | 読んでこなくていいなら、忙しい月でも顔を出せそう |
| Pさん(主催者) | 毎回、自分がいちばん話している。これは誰のための会なんだろう | 最後の10分で、ぽつぽつと仕事の話が出始めた。次の本の相談も、少しはできるかもしれない |
続かない兆しと、次の回からできる手直し
集まりが消えていくときにはたいてい兆しがあり、気づいた兆しに合わせて、次の回から一つずつ手を入れていけば十分です。よくある兆しと、それに合わせた手直しを並べます。
| 兆し | 考えられること | 次の回からできる手直し |
|---|---|---|
| 発言が主催者と一部の人に偏る | 出番が見えない | 終わりに全員が一言ずつ話す時間をつくる |
| 準備してこない人が増える | 準備の量が多い、または「読んでこなくても大丈夫」が当たり前になった | 範囲を半分にする。読めなかった人も、読めなかった理由を一言話してよいことにする |
| 欠席の連絡がなくなる | 来なくても誰も困らないと感じている | 次回、誰がどの範囲を読むかを、その場で決めて終わる |
| 毎回、本の内容の確認で終わる | 学ぶ中身が仕事とつながっていない | 「自分の仕事なら、どう使うか」を話す時間を加える |
| 終わりが見えない | いつまで続くのか分からず、抜けにくい | 1冊、または3回を区切りにして、一度振り返る |
区切りを決めるのは、やめるためではありません。振り返りの場があると、進め方への本音を話す機会、つまり話し合わずに過ぎてしまった混乱期を、あとから取り戻す機会にもなります。
AI活用のポイント:読書会の「問い」を用意する
全員に出番をつくるいちばん簡単な方法は、話し合う問いを用意しておくことです。生成AIに、読む範囲の要点と自分のメモを渡して、問いの候補を出してもらうと、準備の負担を軽くできます。本の文章を長く貼り付けるのは避け、目次や自分のメモを渡すのが安全です。
社内の読書会で、次の範囲を読みます。参加者は6人ほどで、職種はばらばらです。
読む範囲:[例 第3章「チームの学習」]
この章の要点(自分のメモ):
[例
・チームで話し合うと、個人で考えるより視野が広がることがある
・ただし、本音が出ない場では形だけの話し合いになる]
次の条件で、話し合いの問いを5つ出してください。
1. 本を読めていない人でも、自分の経験から答えられる問いを2つ入れる
2. 自分の仕事にどう当てはめるかを考える問いを2つ入れる
3. 正解のある問い(内容の確認)は1つまで
4. 1つの問いは、1文で短く
AIが出した問いは、そのまま使わず、グループの様子に合わせて言葉を直してから出します。誰が答えにくそうかを思い浮かべながら選ぶのが、主催者の仕事です。
まとめ
- 勉強会が消えていくのは、熱意が足りないからとは限りません。人数が増えると力を抜きやすくなる「社会的手抜き」と、最初の数回で決まる「当たり前」が関わっています
- 手抜きは、出番が見え、仲間も準備してくると思え、学ぶ中身に意味を感じられるときに小さくなります
- 読書会は、担当発表型、事前に読んで対話する型、当日に読む型など、進め方の型で続きやすさが変わります
- 兆しに気づいたら、次の回から一つずつ手直しをします
次の回の終わりに、全員に「次回、自分が持ってくる問いを一つ」決めてもらってください。それだけで、次の回に一人ひとりの出番が生まれます。
12人、9人、7人、4人。冒頭の数字は、誰かの熱意が冷めた記録ではなく、出番と当たり前が少しずつ欠けていった記録です。4人になった回は、終わりの合図ではなく、全員に出番が回る人数になった回でもあります。
連載:越境学習とコミュニティ
職場の外で学び、つながりを組織の力にするまでを、12本で順にたどる連載です。
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参照情報
- Bibb Latané, Kipling Williams and Stephen Harkins, “Many Hands Make Light the Work: The Causes and Consequences of Social Loafing,” Journal of Personality and Social Psychology, 37(6), 1979, pp. 822-832
- Steven J. Karau and Kipling D. Williams, “Social Loafing: A Meta-Analytic Review and Theoretical Integration,” Journal of Personality and Social Psychology, 65(4), 1993, pp. 681-706
- Bruce W. Tuckman, “Developmental Sequence in Small Groups,” Psychological Bulletin, 63(6), 1965, pp. 384-399
- Bruce W. Tuckman and Mary Ann C. Jensen, “Stages of Small-Group Development Revisited,” Group & Organization Studies, 2(4), 1977, pp. 419-427




